夫婦別姓「また先延ばし」「何回ボール投げれば」 事実婚の申立人ら、国会に議論預けた最高裁に落胆

申立人の40代女性(右)は、別姓で書き込んだ婚姻届を大切に持ち歩いてるという(2021年6月23日/弁護士ドットコム)
2021年06月23日 22時48分

夫婦別姓の婚姻届を受理しないのは憲法に反するとして、事実婚の夫婦3組が訴えていた家事審判の特別抗告審。最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は6月23日、夫婦同姓は「合憲」との判断を示した。最高裁が判断するのは2度目。

最高裁は今回、選択的夫婦別姓制度について、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄のほかならない」として、国会の立法裁量に委ねた。これは、2015年判決を踏襲したもので、申立人は憤りを隠さない。

背景には、「選択的夫婦別姓」制度の導入が明記された1996年の法制審議会による答申がある。制度は実現するかに見えたが、当時、自民党の反対により、国会への法案提出は見送られた。

このため、夫婦同姓を義務付けた民法は違憲だと訴えた第1次夫婦別姓訴訟が起こり、2015年の最高裁判決に至ったという経緯がある。

遅々として進まない国会に再び議論を預けたかたちの最高裁決定に、都内で会見した申立人らは「何回ボールを投げればいいのか」と落胆した表情をみせた。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●「別姓の婚姻届を出したかった」

「今日は帰りに役所に寄って、この婚姻届を出したかったです」。会見でこう話したのは、申立人の一人である都内の40代女性だ。夫とは事実婚状態が続いている。

女性が取り出した婚姻届には、「夫の氏」と「妻の氏」を選ぶ欄に「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」と書かれていた。

女性は「ジェンダー平等を掲げている五輪を東京が開催する中、夫婦同姓は世界の恥だと思っていましたから、まさかこんな決定は出さないだろうと期待していました。残念です」と語り、時折声を詰まらせた。

「この訴えは私たち申立人の後ろにたくさんの当事者がいます。そういう人たちの期待を裁判所は裏切った。2015年と同じような判断を出すということは、個人の人権に真摯に向き合わず、考えを放棄したということです。そんな国に自分たちは生きているのだと突きつけられました」

女性の夫である40代男性も、憤りをみせる。

「今回の訴えは、男性女性限らず、すべての人にとって重要な問題です。日本国民が考えていくべきことだと思います。しかし、最高裁が国会にボールを投げたことにはショックが大きいです。何度、ボールを投げればよいのだろうかと…。

私たちには小学生の子どもがいますが、彼らが大きくなって結婚したい考えたとき、同姓か別姓か選べるよう、選択肢をつくることが私たち世代の役割だと思っています」

東京・霞が関の弁護士会館で会見する申立人と弁護団(2021年6月23日、弁護士ドットコム撮影)

●「安倍長期政権」の影響?

「過去40年にわたる人権問題の決着が、また先延ばしされることになりました。機能不全に陥っている三権分立、結論を出すことを押し付け合う司法と立法。

交わされるテニスのラリーを当事者はずっと首を右に左に振りながら見てきました。衆院選までまた延期となった自民党内議論を横目に司法が先にスマッシュを決めてくれると思いきや、また立法に打ち返した内容です」

そうコメントするのは、国会での制度化を地方議会から働きかけている市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長、井田奈穂さんだ。

今回の決定は最高裁大法廷がおこなった。15人の裁判官のうち、夫婦同姓を「合憲」としたのは11人。「違憲」としたのは4人だった。

2015年の大法廷判決に比べ、「違憲」は1人減っている。「違憲」派が減ったことについて、井田さんは「安倍長期政権で保守的な裁判官を揃えた結果であるのは明らか」と指摘する。

実際、2015年の最高裁判決では、15人の裁判官のうち女性は3人だったが、現在は2人に減っている。また、当時は女性3人を含む5人が「違憲」の判断をしたが、全員がすでに退官している。

●求められる国民の「行動」

第1次夫婦別姓訴訟から弁護団を率いてきた榊原富士子弁護士は「最高裁の裁判官に女性が少ないことは、国際的に日本の女性の地位が低い理由の一つです。最高裁の半分が女性裁判官であれば、このような結論にはなっていなかったとも思います」と話す。

一方、今回の決定で、「違憲」とした宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は、日本も批准している女子差別撤廃条約に基づき、夫婦同姓の強制を改めるよう、国連から何度も正式な勧告を受け、法改正が求められていることを指摘した。

「我が国の憲法は人権の尊重と平等原則という国際的にも普遍性がある理念を取り入れたもの」とも述べている。

「宮崎裁判官たちが書いたような人権尊重・平等原則がなぜ守られない国なのか。国民の『行動』が求められています」と井田さん。さらなる世論への働きかけをおこなっていくという。

●それでも「前へ進みたい」

2015年判決に比べて、今回は「後退」なのだろうか。榊原弁護士は「違憲判断をされた裁判官の数が人事構成によって減ってしまい残念です。しかし、違憲とした4人の裁判官は反対違憲や補足意見で、熱意と心をこめて書いてくださったことに感動しています」と話した。

50ページ以上におよぶ「決定」を読み解くと、「合憲」とした裁判官の補足意見は5ページ程度におさまっている。一方で、「違憲」とした裁判官の意見や反対意見は40ページ以上が割かれていた。

今回、最高裁では「合憲」の判断を崩さなかったが、同様の家事審判の特別抗告や、複数の国家賠償訴訟の上告がされており、選択的夫婦別姓を求める人たちの声を今後も止むことはない。

この日、会見で申立人たちは異口同音に「残念というほかない」としながらも、「訴訟に勝つことが目的ではない。選択的夫婦別姓の実現に向けて前に進みたい」と決意を新たにした。

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